1月~12月の範囲で多額の医療費がかかった場合、自分で支払った金額に応じて所得税を還付してくれる制度が【医療費控除】です。
という理由でスルーしてしまうのはもったいない!
「計算してみたら対象だった!意外と簡単に手続きできた!」
という事もあると思うので、今一度確認してみる事を強くおすすめします!
特に『入院』『出産』があった年や、『子どもが複数いるけど、自治体の医療費助成の対象外で医療費がかさむ~』というご家庭は必見です!
医療費控除のしくみ
還ってくるのは医療費じゃない!
「医療費控除」のネーミングのためか、なんとなく「医療費控除→医療費が控除される→支払った医療費の一部を返してもらえる」というイメージが付きがちですが、それは間違い!
実際に控除されるのは所得税です。
年間で一定額以上の医療費を支払った場合、
「これだけ沢山の医療費がかかってしまったんだから、お給料に対して課税されている税金を、一部還付しますね~」
という仕組みです。
「医療費控除の対象となるのは誰なのか?」や「いくら以上の医療費が対象になるのか?」という具体的なことについては、以下で説明していきます。
医療費控除 対象となる金額&還ってくる金額
医療費控除対象額の計算方法は?
医療費控除の対象となる金額は、次の式で簡単に計算できます。
(A)実際にかかった医療費ー(B)保険等で補填された医療費ー10万円※
(※総所得が200万円以下の人が対象となる場合、10万円ではなく総所得の5%。)
もっと簡単に言うと、
病院の窓口や薬局、ドラッグストアなどで支払ったレシートの合計から10万円を引いた分
の金額です。
(A)実際にかかった医療費は[1月~12月]の区切りで計算します。
計算に含まれるのは、その期間内に実際に支払った医療費であり、支払い予定の金額は含まれません。
(例:12月1日~1月31日の2か月間の入院費用を1月31日に支払う場合、12月1日~12月31日の入院費用にあたる金額も、1月の医療費となります。)
また、ここで出た金額はあくまで「医療費控除の対象額」であり、この金額が丸々還付されるわけではありません。
次で詳しく見てみましょう!
どのくらい還付されるの?
分かりやすい数字で上の式に当てはめ、まずは医療費控除の対象額から計算してみましょう。
実際にかかった医療費の合計が30万円(A)で、そのうち10万円(B)が保険で支払われたとすると、自己負担として支払った医療費は20万円となります。
そこから10万円を差し引いた10万円が、医療費控除の対象となります。
医療費控除の手続きを行うと、その10万円分の所得税にあたる金額を還付してもらえることになります。
年所得が500万円の人の場合、所得税率が20%となるので、
10万円×20%=2万円
の還付を受けられることになります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 ~ 1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円 ~ 3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 ~ 6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 ~ 8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 ~ 17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 ~ 39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
(引用:▶所得税の速算表|国税庁)
医療費控除 誰が申告するのが良い?共働きの場合は?
医療費控除が適用されるのは、簡単に言い表すと
「自分&生計を一にしている家族の医療費が1月~12月の期間に10万円※を超えた人」
です。
(※総所得が200万円以下の人が対象となる場合、10万円ではなく総所得の5%。)
仕送りをしている高齢の親・大学生の子どもなどがいる場合は、生計を一にしているとみなされる事がほとんどで、彼らの医療費も計算に含めることが出来ます。
また、夫婦共働きで生計を立てている場合でも、どちら一方がまとめて申告することが出来ます。
【医療費控除のしくみ】でも説明しましたが、控除されるのは所得税です。
それを踏まえると、夫婦共働きの場合には、所得が多い方の医療費として申告した方が、還付金額も増えるケースが多いでしょう。
というのも、日本は所得税計算の際、所得が増えるほど課税率が高くなる「累進課税方式」が採用されているためです。
例えば、対象額が10万円だった時、年所得が500万円の人の場合は10万円×20%の20,000円が還付されるのに対し、年所得が700万円の人の場合は10万円×23%の23,000円が還付されることになります。
対象となるもの&ならないもの
医療費控除の対象となるのは、医師による診療・治療の対価や治療に必要な医薬品の対価が主であり、病状に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とされています。
病気予防や健康増進のためのビタミン剤・サプリ等は対象となりません。
(参考▶:医療費控除の対象となる医療費|国税庁)
見分け方としては、
「病気やケガの治癒の為なら対象〇/予防の為なら対象外×」
「お医者さんが必要と認めたものなら対象〇/自己都合なら対象外×」
という印象があります。
具体的な項目について、以下で見ていきましょう。
〇医療費控除の対象として認められるもの
- 体調が悪い時に病院にかかった際の診療代
- 体調が悪い時に病院にかかった際に処方された薬代
- 体調が悪い時に薬局で購入した市販薬
- 重大な病気が見つかった際の健康診断や人間ドック
- 治療として指圧やはりなどの施術を受けた際の施術代
- 通院のために公共交通機関やタクシー(公共交通機関が利用できなかった場合)を利用した際の交通費
- 妊娠と診断されてからの定期健診や諸検査費用
- 出産入院時のタクシー代
- 入院中に入院費用の一部として支払われる食事代
- 医師が必要と判断した際に大部屋ではなく個室へ入院した際の差額ベッド代
- 子どもの成長を阻害しないためや、医療目的で行われる歯列矯正
- 金やポーセレンを使用した歯の治療
- 医師の治療を受ける為に直接必要となる眼鏡の購入費用
(子どもの視力の発育を促したり、白内障患者がし機能回復のために装着するのを、医師が指示した場合等)
×一見医療費でも医療費控除の対象にならないもの
- 通常の健康診断や人間ドック費用
- 入院の際に渡した担当医や看護師への謝礼や心づけ
- 病気予防のために服用するためのサプリや栄養剤
- 疲れを癒すためのマッサージ代
- 通院のために自家用車を利用した際のガソリン代や駐車料金、公共交通機関で行ける病院へタクシーを使った際のタクシー代
- 入院中に使用するパジャマや洗面具等の購入費
- 入院中に外部から配達してもらった出前等の食事
- 入院の際、本人都合で大部屋ではなく個室を選択した場合の差額ベッド代
- 美容目的での歯列矯正にかかる費用
- 一般的な禁止や遠視矯正のための眼鏡やコンタクトレンズの購入代金
(参考:▶医療費を支払ったとき|国税庁)
△対象かどうか分からない場合
国税庁で明記している事柄に当てはまらない場合など、判断に迷うケースも多くありますよね。
大人の歯列矯正に関しては、歯医者さんの診断書があると対象として認めてもらえるケースがある様です。
また私自身、出産入院時は医師の指示で個室入院となり、その旨を添付した領収書にメモしておいたところ認めてもらえました。
(今は領収書の添付は必要なし。)
最終的な判断は税務署が行うことになるので、管轄の税務署に相談してみる事をおすすめします。
ただし、確定申告時期は沢山の問い合わせ対応をされていると思うので、病院から領収書をもらったら都度聞いてみるのが良いでしょう。
(確定申告の時期になると、役所に申告書作成のお手伝いコーナーを設置してくれる自治体もありますが、おそらくお手伝いしてくれるのは記入の方法がメインだと思います。税理士さんが常駐しているところであれば、経験豊富な税理士さんなら助言がもらえるかもしれませんね。)
医療費控除を適用してもらうための手続き
確定申告が必要
医療費控除を適用し、所得税の還付を受けるには、【確定申告】が必要となります。
国税庁の公式サイトで、入力方法が詳しく載っているので参考にしてみてください。
▶:医療費控除を受ける方へ|国税庁
確定申告は、1月~12月の分を翌年の2月16日~3月15日の期間内に行うことになっています。
しかし医療費控除の様な【還付申請】に関しては、翌年の1月1日から5年間に渡って受け付けてもらえますので、過去に申請し忘れていた分も5年間分は遡って申請することが可能です。
ふるさと納税でワンストップ特例を利用する場合は注意が必要!
ふるさと納税を行っていて、ワンストップ特例(確定申告ではなく、書式に記入して返送して寄付金控除を受ける方法)を利用する場合には注意が必要です。
医療費控除に限らないのですが、なんらかの理由で確定申告を行う場合、ワンストップ特例は適用されず、正しく寄付金控除が適用されなくなってしまいます!
医療費控除等で確定申告を行う場合、ふるさと納税による寄付金控除申請も、確定申告で行う必要がある事を忘れないでおきましょう。